Frist time



あれ、俺なにやってんだ?


梨華ちゃんの目元に手を伸ばしかけている自分に気がついた。はっとして、慌てて自分の手を引っ込める。
俺、触ろうとしてた?

いやいや、ないだろ。

ぶんぶんと頭を振る俺に気づき、不思議そうにする梨華ちゃん。そりゃ、どうしたんだこいつって思うよな。
ほんと俺、どうかしちゃったらしい。


「大丈夫?てかごめんね。長くここにいるから疲れちゃったよね。」


梨華ちゃんは慌てて涙を拭いて勢いよく立ち上がる。それにつられて俺も腰を上げた。


「いや、そんなことないよ。でも、今日はとりあえず帰るか。

ごめん、特に何もしてやれなくて。」


「ありがとう。聞いてくれただけで少しすっきりしたよ。

それじゃあね。」


そう言ってエコバック型のスポーツバックを肩にかけて駅の反対側に向かう梨華ちゃん。俺はまたその後ろ姿を見ていた。


梨華ちゃんのこと触ろうとしてた。泣くなよって、そう言って触れたかった。
俺なら、こんな悲しい思いさせないのに。




なんだろな、この気持ち。





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