Frist time
次の日の昼休み、もはや俺たちが話すとすればここだと決まっている教室のベランダに宏を呼び出して、2人で並んで座っていた。
昨日あれから考えて、自分の気持ちに気づいた俺は、宏に話すことにした。やっぱり隠しておくのはだめだと思ったから。
「なんだよ、お前から話とか珍しいじゃん。どうした?」
そう言ってにかっと笑いながら俺を覗き込む宏。こんないいやつに俺はこれから酷いことを言わなくちゃいけない。
「あのさ、俺梨華ちゃんのこと好きになった。」
一瞬にして顔が強張る宏。そして俺は追い打ちをかけるようにこう言った。
「お前の元カノの、梨華ちゃん。」
俺の言葉を聞いた瞬間、宏が怒ったのがわかった。こいつ、こんな顔して怒るんだな。
こんな時なのに俺はそんな能天気なことを考えていた。というか、こいつには殴られる覚悟で話しているから、逆に開き直ってるんだ。だから、これくらいは想定内。
「お前、なに言って・・・」
そう言って拳を作り俺に向かって振り上げる宏。俺はギュッと目とつぶった。
ガンと響いたのはベランダの手すりからで。あれ、なんでだ?
見上げると宏がベランダの手すりに握った拳を叩きつけていた。本当に、どこまで優しいんだよ。
俺はお前に内緒で梨華ちゃんと会って、勝手に好きになったっていうのに。
「なんで、そうなったんだよ。
てか、いつから?よく、わかんねえわ。」
宏の苛立った低い声が聞こえた。