Frist time



宏と梨華ちゃんが別れて1か月ぐらいが経った頃。
あれから俺と宏は一応何もなかったように接していた。本当に何もなかったみたいに。
でも、宏は決して俺と梨華ちゃんがどうなっているか聞いてこないし、俺も絶対梨華ちゃんのことを口にしない。


俺たちの間にはかなり深い溝が出来ているんだと思う。ただ、見ないように、触れないようにしているだけ。


普通なら嫌いで別れたわけでもない彼女のことを好きだというやつが出来てきたら話したくもなくなるだろ。でも、宏の場合は違う。本当に梨華ちゃんのことが好きで大事だったからこそ、今こうやって俺を応援してくれてるんだ。








「おーい、宏、呼んでるぞ。」


がやがやと騒がしい昼休み。教室中にクラスメイトの男子の声が響いた。声をかけたやつの方をみると、どうやら他クラスの女の子のようだ。これは・・・恒例のあれだな。

椅子から腰を上げてその子の元に向かう宏。俺は机に頬杖をつきながらその子の元に向かう宏の背中を見ていた。

あーあ、ご愁傷様。



宏はあのルックスだし、それに優しくて人当たりがいいからすごくモテて、告白してくる子が絶えない。え?俺はって?俺はあんま愛想良くないから宏ほどではないし、あまりにもばっさり断るから最近は減ってきた。

宏は断る時まで優しいと評判だ。まあ、断るんだけどね。
だから今回の子も可哀想だけど、しょうがないな。宏は転校しちゃうし、もうこっちで作る気ないだろ。




しばらくして教室に戻ってきた宏。


「翔、あっち。」



宏に指を指された先はもちろんベランダ。俺はおっけと軽く返事をして宏に続いてベランダに向かった。





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