Frist time


地区大会当日。

あの大会と同じように
同じ道を自転車で通る。

吹き抜けていく風があの苦い思い出を走馬灯のように流していく。


先輩たちの無念の思い


先輩たちが流した涙


今度こそ絶対にそんなことはしない。
絶対に、やってやる。
そのために今まで朝練も居残り練もやってきたんだ。
自信があるわけじゃないが、不安をかき消すくらいの練習はしてきた。
それならあとは自分を信じるしかない。



会場につき、ロッカールームで最後のミーティングを済ませ、コートに立つ。
コートに行く前に、亮が背中をばんと叩いてくれた。
俺は亮の方を振り返り、お互いの拳をくっつける。

「いってくる」

不安や迷いはこれっぽっちも無い。
もちろん、梨華のことも頭になかった。
この時だけはバスケだけに集中したい。


バスケ部の中でも身長が高い俺は、始めのジャンプボールを任されていた。
高鳴る鼓動を抑えるため、目をつぶり深呼吸をする。


ピーーー!!!


ホイッスルの音と同時に俺の視界は明るくひらけ、
高く高く、ボールへ手を伸ばした。



< 75 / 154 >

この作品をシェア

pagetop