Frist time
地区大会当日。
あの大会と同じように
同じ道を自転車で通る。
吹き抜けていく風があの苦い思い出を走馬灯のように流していく。
先輩たちの無念の思い
先輩たちが流した涙
今度こそ絶対にそんなことはしない。
絶対に、やってやる。
そのために今まで朝練も居残り練もやってきたんだ。
自信があるわけじゃないが、不安をかき消すくらいの練習はしてきた。
それならあとは自分を信じるしかない。
会場につき、ロッカールームで最後のミーティングを済ませ、コートに立つ。
コートに行く前に、亮が背中をばんと叩いてくれた。
俺は亮の方を振り返り、お互いの拳をくっつける。
「いってくる」
不安や迷いはこれっぽっちも無い。
もちろん、梨華のことも頭になかった。
この時だけはバスケだけに集中したい。
バスケ部の中でも身長が高い俺は、始めのジャンプボールを任されていた。
高鳴る鼓動を抑えるため、目をつぶり深呼吸をする。
ピーーー!!!
ホイッスルの音と同時に俺の視界は明るくひらけ、
高く高く、ボールへ手を伸ばした。