Frist time


宏をじっと見据え、肩を掴んで、気持ちが伝わるように念を込める。

だが宏はかなり混乱しているようだ。


「んなこと言われたってよ…」

そう弱々しく嘆き、下を向いた宏の肩を更に力を込めて揺する。


「…お前だってまだ好きなんだろ?
好きな気持ちに嘘ついて辛くないのかよ!
…本当は前みたいに戻りたいって思ってんじゃねぇのか?」


「…うるせぇよ!
んな適当なことばっか言ってんなよ!

俺は…もう、梨華のことなんて好きじゃ…」



バキッ



「お前ふざけんなよ!」



倒れ込んだ宏が顔を押さえて、驚いてこっちを見ている。
殴られるなんて思っていなかったんだろう。
俺だってそんなつもりはなかった。
けど、こいつが全然分かっていねぇから、どうしても抑えきれなかった。


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