Frist time
「宏?
お前、どーしたんだよ。」
俺がそう尋ねると、宏ははっとしてこっちに顔を向けた。
「ごめんごめん、意識飛んでたわ。
・・・あーあのさ、」
「おーいお前ら!
テンション低いぞー!
なんだよ、モテる奴のひがみかよ?」
そう言ってクラスのやつがいきなり俺に肩を組んできた。なんだよ、はこっちのセリフだし。
お前のせいで宏が言おうとしてたことが遮られたじゃねえかよ。そう思って俺はため息をついて、肩を組んできた奴を肩越しに見上げる。
なのに、そいつは俺が若干イライラしていることに全く気付く様子もなくべらべらと話し続けて、さらにはかなり突っ込んだ質問をしてきた。
「お前らレベルならあれくらい可愛い子でも余裕なんだろうなあー。
なあなあ、宏達は彼女いんのか?」
そんなキラキラと期待の籠った目を向けられてもね。残念ながらご期待に沿えるような回答はできませんね。
俺は首に回った腕を外しながら、
「いねーよ。つーか、俺興味ないわ。」
とそっけない答え方をした。こうすれば少しはこの手の話をされないかなという期待も込めて。
「まじかよ!絶対いると思ってたわ。
宏は?」
そう聞かれて、宏に周囲の視線が集まる。自分がこの手の話は苦手なくせに、ちょっと宏の話は興味があった。俺たちの間でそういう話をしたことなかったし、こんなにかっこいいんだからいて当然かなという気持ちもあった。
宏は一度視線を下げた後、すぐにいつもの優しそうな顔になって微笑みながら、こう答えた。
「いるよ。」
その表情は今まで見た中で一番優しそうな顔だった。