Frist time
「なんか…毎回毎回、ありがとな。
ちょっと気持ち回復。」
俺はこの子に初めて笑顔を溢した。
俺の今の心は秋空のように澄み渡っていた。
「お前も上手くいくように頑張れよな」
なんだかこの子には幸せになってもらいたかった。
だから思わず口から溢れた言葉。
「うん!
ありがとう。
今日で更に気持ちが増したな」
俺も役に立てたならいいんだけどな。
そう言って走って屋上を出ようとしたあの子の背中を見て思い付いた。
「ちょっと待って!
お前、名前なんていうの?」
ずっと聞き忘れていたことを今日は思い出せた。
やっと誰だか分かるな。
「元木玲菜。
あなたのことが大好きな、玲菜だよ!」
そう叫んで屋上を飛び出したあの子。
俺は口をあんぐり開いてもう閉じたドアを見ることしか出来なかった。