私の隣の狼さん。
低い男の人の声が聞こえた。
私はくるっとドアの方を向く、
その時、心臓が跳ねた。
其処には、校則に載っていない赤。
赤を頭にまとう 整った顔立ちの男の子。
わたしはその髪の毛に一瞬で吸い込まれていくようだった。
いや、吸い付くように見てしまっていた。
「暑っ、なんだよ、これ春の気温かよ」
黒い学制服の袖を肘あたりまでまくって、彼は着ている赤いTシャツで自身をあおぐ。
なんて細い腕。ていうか、色が白い。顔立ちが整ってて、なんだかこれって所謂……
その瞬間、彼と目が合った。
そのまま瞳を逸らさない彼。
そのまま瞳を逸らさない私。
なんて言ったらいいかわからない空間。
不思議な空間。不思議な髪色の彼。
先に口を割ったのは、彼の方だった。
「……んだよ、あんまりこっち見んじゃねぇ」
「あっ、すみません」
「てか、あんたが坂口?」
「うん。あなたが西野君?」
「ああ、西野亮太。普通にりょうたって呼んで」
「いえ、私は西野君でいいです……
ていうか、わたしのことは雛乃でいいよ」
「え?あ、ああ。」
「て、ていうか」
「何?」