私の隣の狼さん。
 



それから会話が途切れた。
気づけばもう自分たちが住んでいる住宅地を歩いていた。
さっきいた場所と全然違う。昼なのに馬鹿みてーに大声で喋る奴も笑う奴もいない。
ただ静かに、春にしては暖かすぎるくらいの空気が流れる。


突然、あのさあ。と言う低く聞き慣れた声がして俺は足を止める。


「悪いけど、俺亮太に負ける気しない」

「は?……何が」

「……ホッケー」

「今度は絶対勝つからな」

「まぁ、今度は亮太の家にあるゲームで勝負しようよ」

「何で」

「そっちでも負ける気がしない」

「勉強で勝負しようか」

「それは嫌だ」


ユーキは見かけによらず勉強が苦手だと言う。
何もやらなくても出来る俺が羨ましいと言う。

だけど俺はユーキが羨ましい。
勉強より、ゲームが強い方が楽しいと思う。



 
< 53 / 57 >

この作品をシェア

pagetop