短編‡よこたわるくうき。
いただきます。
新しく越してきたアパートは、よく言えばレトロチックな昭和のにおいがする。
難しく言えば、古色蒼然たる佇まい。
ぶっちゃけてしまえば、狭くて古臭く、おまけにカビ臭いオンボロ物件だった。
でもまあ、会社に割り当てられた寮がここだったんだから、我慢するしかない。
割合キレイだった2人部屋や3人部屋を蹴って、1人部屋を希望したのは、他でもないアキラ自身だったのだから。
いくら狭くて古臭くてカビ臭いオンボロアパートでも、ここはアキラの城になるわけで。
そう思えば、スカスカと空しい音を立てるチャイムさえも、愛おしく思えてくる。
(配線系統かなぁー……修理、自費じゃねぇよな?)
心配なのは、つまり、それくらいなのだ。
自分の職務をまっとうしようとする気がかけらもないチャイムを除けば、なかなかに快適な部屋だ。
そう、思うことにしよう。