短編‡よこたわるくうき。
トモヒロはがつがつとオムライスを食べる。
アキラが作ったオムライスだ。
「うまいか?」
「美味しいよ? アキラくんの料理は全部美味しい!!」
「……いや、お前のおかゆもなかなかだったよ」
率直に言われて、アキラは照れながらそう返した。
「おかゆ? アキラくんが風邪引いたときの? あれ、母さんに作ってもらったやつなんだ。最初は自分で作ったんだけど、なんかまずくなっちゃったから!」
そんなの、初耳だ。
と、言うか。
おかゆをまずくするとは、どこまで不器用なのだろう。
(まぁ、馬鹿な子ほど可愛いって言うし)
トモヒロは可愛い。
トモヒロは可愛い。
だって、こんなにも素直じゃないか。
自分に暗示をかけるように、心の中でそう繰り返していたアキラのことなんか露知らず。
トモヒロはまるでマイペースに、あっ、と声を上げた。
「なんだよ」
「さっきの話聞いてて思ったんだけどさ」
『さっきの話』とは、さきほどアキラがしていた、ここに越してきたときの話だろうか。
「昭和のにおいって言ってたけど、アキラくん、平成生まれでしょう?」
馬鹿で可愛い大型犬は、まるで邪気のない笑顔で言った。