短編‡よこたわるくうき。
ごちそうさまでした。
実際、「猫越しのお隣さん」の正体を知ろうと思えばいつでも出来た。
あちらの窓が開いたときに、こちらも窓を開ければよかった。
でもそれは、もちろんあちらからも同じことが言えたわけで。
お互いにそれをしようとしなかったのは。
ただ、
あの、距離を。
猫をへだてた、
あの、空気を。
なくしたくなかっただけ。
そう、それはちょうど。
オムライスを食べるきみと、
それを見守るぼく。
そこに横たわっている空気とおなじもので。
オムライスを食べるきみと、
それを見守るぼく。
テーブルを挟んだその距離とおなじもの。