短編‡よこたわるくうき。
「で、話を戻すけどね。日照権とかそういうのじゃないんだ。日光だったら、もうひとつの窓から十分入ってくるよ」
「へぇ、じゃあなんだよ。文句ねぇじゃん」
「文句……それとも違う気がするけど。想像してみてよ。窓がふたつあって、ひとつからはおひさまの光がたくさん入ってきます。でも、もうひとつの窓はまっくらです。気になるでしょ?」
「なるな」
「俺も気になったのね。だから、開けてみたんだよ。そしたらさ、あったわけ」
「なにが」
「窓が」
「窓が?」
「そう。窓がね」
アキラはお茶をひとくち飲んで、のどに湿り気を与えてやった。
友人は、話の続きが気になってしょうがないみたいで、箸が止まっている。
「で?」
「おしまい」
「はぁ?」
「おしまいだよ。それで、おしまい」
そっけなく言うと、友人はしばらく悩んでから、ぽんと手を打った。
「わかった。つまり、隣のマンションの、どれかの部屋の窓の真正面に、お前の部屋の窓もあったわけだ」
「そーゆうわけ。たぶんね、手ぇ伸ばせばあっちに届いちゃう」
「そりゃ、気まずいな」
「でしょ」
アキラは苦笑いして、はるさめをすすった。
もうすぐ昼休みも終わる。
友人も、伸びてしまったカップ麺をまずそうに平らげていた。