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緻密な背景描写・心理描写はないのに、ここまで読ませられるのは才能か。 視点違いを書くのであれば、是非とも中・長編にして欲しいです。
また聞こえた窓を開ける音に、私ははたと顔をあげた。 アパートの隣室に住んでる男の人は、なぜだか日に数回、窓を開け閉めする。 換気……じゃないみたいだ。 開けて、またすぐに閉めているから。 ガラリ。 ほら、もう閉めた。 窓の外になにかあるのだろうか? 彼の部屋の間取りじゃ、二つある窓のひとつは目の前がマンションのはずだけど…… ガラリ――にゃあ、にゃあ―― 猫? また窓が開いて、今度は猫の鳴き声が聞こえる。 猫と、窓と…… それだけなのかな? 壁の向こう、横たわっている無関係の空気に、私はわざわざ探りを入れる。 ガラリ。 彼が毎日窓を開け閉めするのは、どうして? それはたぶん、窓の向こうで待っている猫と。 真向かいのマンションの人が、知ってるかもしれない。
とてもよくまとめられた短編だと思います。 後半だれもが予想外の裏切りに合うでしょう。しかし、それは初めの違和感を一気に払拭してしまうような、逆に気持ちの良いものでした。 この惹きこまれやすさ、読みやすさを見習いたいと思います。