十人十恋-じゅうにんとこい-
「ありがとう~!美味しそう…」

白川さんもカバンの中をゴソゴソ探った。

「そうだ、黒山くん、猫好き?」

「うん。好きだよ」

返事したら、白川さんは僕に猫カフェの60パーセント割引券をくれた。

「最近、貰ってばっかりだったから…だから、何か渡さなきゃって…」

僕は満面の笑顔で「ありがとう」と言った。

「んーこのサンドイッチ、おいひー!」

…意外とガツガツ食べるんだね、白川さん。

って言うか、これって完璧に“デート”だよな?!

ぼ、僕が、白川さんとデートしてるのか…!

「黒山くんのお母さんってお料理うまいよね~羨ましいな~」

「あぁ、うん…」

「黒山くんは料理したり、しないの?」

「しないよ。必要な時にしか」

あああああ!!!嘘ついてしまった!

嘘を突き通してしまった!もう、引き返せない…

「へぇ…ねぇねぇ、これからもモルさんのことでさ、関わるのかもしれないし、良ければ、名前で呼び合わない?」

………、ええええええ?!

ギクシャクしてる僕を無視して、白川さんは話を進めた。

「わ、私、男の子の友達っていないし、モルさん好きな人、少ないでしょ?だから…」

白川さん、モジモジしてる…

「黒山くんも私の事、“紗江(サエ)”って呼んで。私も宏一(コウイチ)って呼ぶから」

白川さん、本当に可愛いよ。

でも良いのかな。僕みたいなクラスの影的な男が、白川さんみたいな女の子と親密になって…

「わ、わかった…さ、紗江さん」

「ダメ。“さん”はダメ」

えー、でも、恥ずかしい…

「さ、紗江ちゃん…」

恥ずかし過ぎる…

「宏一くん」

あぁ、恥ずかしかった…
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