十人十恋-じゅうにんとこい-
とりあえず、見つかって良かった。

紗江ちゃんに渡しにいこう。

僕は息切れしながら、階段を上って教室に行った。

「ハァ、ハァ…ァ、ハァ…・・、紗江ちゃん、見つかったよ」

「宏一くん?!ありがとう!」

その時、紗江ちゃんの頬に涙の跡があった。

「何か、職員室に行って、先生に聞いたら、落し物届けにあったみたいだよ。廊下に置いてあったって」

これは嘘。

でも、僕は紗江ちゃんを傷つけたくない。

「あ、ありがとう…ねぇねぇ、少しだけ、話しても良い?テスト勉強とか大丈夫?」

「う、うん。大丈夫だよ。僕も英語の教科書、忘れてさ」

「そうなんだ。一緒に探してくれてありがとう」

「どういたしまして…」

紗江ちゃんは寂しそうに話始めた。
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