十人十恋-じゅうにんとこい-
「したって、全部、アンタが持っていくじゃん」

白川さんは、物凄い怒った顔して言った。

「文句を言う前に自分たちは、何かした!?」

「し、したわよ…、でも、黒山は振り向かなかった…っ!」

「だからと言って、私に八つ当たりしないで。男の人たちだって好きな人を選ぶ権利ぐらいあるのよ。それがたまたま、私だっただけのこと」

「“私だった”って、アンタ、いつもそうじゃない」

「確かにそう。アンタ、モテモテだもん」

白川さんは、この後、論破出来ないままでいた。

「だから、体育館倉庫(ここ)に閉じ込めてやる…っ!」

二対一で、白川さんが危ない位置だ。

早く、止めないと。

「おい。やめろよ」

「く、黒山…?いつから、そこに…?」

「君達が紗江ちゃんを体育館倉庫に連れてきてから、ずっと」

「宏一くん…?」

僕は、冷静を保つように心の中で、ずっと命令をしていた。

「紗江ちゃん、行こう。一緒に帰ろう」

「君達も、もう良いだろ?」

僕は紗江ちゃんが逃がれるように、あの二人から去った。



< 33 / 126 >

この作品をシェア

pagetop