十人十恋-じゅうにんとこい-
クラスの委員長の紗江ちゃんと実行員の僕は、先生に放課後残るように言われた。

相変わらず紗江ちゃんは、よそよそしい。

そして、委員会が始まった。

誰が保健係りをするか、誰が司会するか、誰が買出しに行くか、など話し合った。

すべての係りを決まった時、ケータイの時計を見ると四時半だった。

「今日はここまでだな。明日は、具体的なことを決めるから、明日も放課後残るように」

と生徒会長が言って、僕たちは解散した。

そして、誰かにブレザーの袖を引っ張られた。

「こ、ここここ、こいいちくん…」

「宏一だけど…」

「そうそう、こここ、コーイチくん…」

ブレザーの袖を引っ張ったのは、紗江ちゃんだった。

「い、一緒に帰ろう?」

紗江ちゃんの声はいつもより、高くなっていた。

校門を出て、歩いていると、紗江ちゃんはつまづいた。

「…~~っ、いったぁ…」

僕が手を差し出すと、紗江ちゃんは僕の手を掴んで立ち上がった。

「さ、最近、宏一くんと、いると、変になるの…」

紗江ちゃんはうつむいて、話し始めた。

「最近、勉強もはかどらないし、一緒にいるだけで、ドキドキして、今こうやって、話しているだけでも、嬉しくて恥ずかしくて怖くて、逃げたいけど、逃げたくないの。一緒にいくないけど、一緒にいたい…」

そして、彼女の目に涙を浮かべていた。

「ねぇ、私、どうすれば良い?」

どうすれば良いって言われても…

キス?

いやいや、まだ付き合ってないのに、無理だろ!

抱きしめる?

恥ずかしくて無理無理!

「それって、好きってことなんじゃ…?」

ハッ?!

口走ってしまった!
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