十人十恋-じゅうにんとこい-
スーパーマーケットの“チョコレイ党”って言う所に着くと、僕はカレーうどんの材料を探しに行った。

「あら、宏ちゃん、今日も買出し?」

いつものおばちゃんに会った。

いつものおばちゃんは僕が小学生くらいの時から知っている。

おばちゃんは僕をよく褒める。

「はい。今夜はカレーうどんに決めたのですが、カレーの材料が無くて…」

「あらまぁ、アタシも宏ちゃんみたいな息子が欲しかったわぁ~、うちの晴彦(ハルヒコ)と瑛子(エイコ)ってば、全然手伝わないし」

「そ、そうですか…」

晴彦くんと瑛子ちゃんはおばちゃんの子供で、僕は晴彦くんと瑛子ちゃんと、面識はないけど、小学生の時、同じ学校だって聞いた。

晴彦くんは、僕のこと、知ってるみたい。

おばちゃんに別れを告げて、僕は、肉が売ってるところに行った。

「あ、黒山くん?」

あ、白川さんだ。…何か嫌な予感がした。

こんな夕飯の材料を買っている姿なんて、男らしくないじゃないか!

キモイって思われる!

「ナ、ナンデスカ?シラカワサン…?」

ビックリし過ぎて、片言になってしまった。

「偶然だね~、私もね、買い物に来てるの。ん?何ソレ、今晩のおかず?」

「チガウマスヨ。コンバンハ、カレーウドンジャアリマス…ン」

絶対に変人とか思われてるよ!あります…んって何だよ!チガウマスヨって何だよ!

「違うの?」

「ウン」

「なーんだ。私、黒山くんは家庭的な男の子だと思ってたんだけど」

この人はエスパーか何かか。

「それじゃ、また明日!」

白川さんは僕に手を振って、駄菓子売り場に行った。
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