十人十恋-じゅうにんとこい-
朝、起きて携帯の時計を見た。
まだ、七時か…
「バカヒコ!もう、七時じゃん!早く着替えろ!このバカ!」
「るせー…」
俺はもぞもぞと布団の中に包まった。
「お母さんに言われて、起こしてあげたけど、もう知んない!」
バタンッ!
瑛子が俺の部屋のドアを強く締めて出て行った。
家族だから当たり前だが、瑛子との付き合いは長い。
アイツ、今日は機嫌悪いな…
俺はのそのそと着替え始めた。
着替え終わった後、俺は一階のリビングに行って、ご飯を食べ始めた。
「今朝、瑛ちゃんの機嫌悪かったんだけど、晴ちゃん知らない?」
「知らねーよ。昨日は何もつまみ食いしてねーし」
「あら?珍しいわね~…」
お袋に瑛子の話をされたが、聞き流してご飯を食べ終えて、歯を磨いて、顔を洗った。
瑛子が機嫌悪いときは、テストの点数が予想以上に悪かったことか、学校でのちょっとした嫌がらせだろう。
瑛子は完璧主義で、外面は良い。
俺はアイツの実兄だから客観視できないが、今年の二月に女の子からチョコを四つぐらいもらったらしい。ちなみに、学級委員長もしてるし、成績もいいらしい。
本人は中二のくせに行きたい高校をすでに決めてやがる。
しかも、空森区で一番、偏差値の高い“空森高等学校”を狙ってるやがる。
何で、そんなに詳しいんだってか?
知らねーよ。
髪の毛を整えて、「いってくる」とお袋と親父に言って、外へ出た。
今日から、五月か…。