INCOMPLETE A PICTURE BOOK
あたしはどこかで“青春”を求めていたみたいだ。
不本意だ。
こんなことで気が付くなんて。
でも悔しいから涙は流してやらない。
ドタドタドタドタ
静かなはずの廊下からひどくうるさい足音が聞こえてきた。
ガラッ
いつもは潤しかいない教室のドアを開けたのは、クラスの女の子。
「あれ?潤ちゃん」
特に話したこともないのに、名前を呼ばれたことに驚いた。
「あたしの名前、知ってるの?」
そう聞けば、不思議な顔をされた。
「クラスメイトの名前を覚えるのは当たり前じゃん」
――当たり前、ね、
あたしは覚えてないよ。
あんたの名前も、隣の席の子の名前も。
周りから自分を隔絶するために作った壁。
友達なんか作ったら何かが揺らぐ気がした。
だから、あたしは周りと自分を隔てる壁を作って、まわりを見ないようにした。
隠した。
自分を。