リップノイズ
脱がす
しゅ、しゅ、
畳と、着物がこすれて
音が鳴る。
母から受け継いだ着物を着る。
何度も練習したかいがあって
すらすらすら、
着物を着る。
お嫁さんになって初めての着付け。
がら。
障子の開く音。開く音?
「いやあ、僕のお嫁さんは実にきれいだね。」
笑いながら入ってくる不審者。
いや、私の旦那さん。
にへへ。
と厭らしい笑顔を私に向ける
「いやあ、和服ってなんかこう……妖艶だね」
なんだ、この気取った小説家は。
「だから?」
私が挑発するように口角をあげると
後ろから抱きつかれた
「つまり、」
こういうことだよ、
と唇を私の首筋に押し付けた。
"脱がす"
真っ赤な顔になったわたしのまけ(110530)