魂、いただきます
校舎裏の二人
 終業の鐘が遅い午後の校舎に鳴り響き、その日の授業が終った。

 最後が担任の授業だったので、そのまま帰りのHRを簡単に済ませて、起立、礼、終わり。

 何事もなく一日の半分以上が過ぎた。

 そう、何事もなく……

 宮乃は溜め息を軽くついて、席を立ち、ざわめく教室をあとにした。

 昨日と何も変わらない一日が過ぎていく。右肩に掛けたバッグの重さが妙に現実的だった。

 ちらりと左手首を見る。傷の跡はない。

 でも、切った感覚は残っている。

 嫌な感覚だ。

 その感覚を感じる度に、あの悪魔を思い出す。

 こんなにリアルに感じるということは、やはり、本当のことだったのだろうか?

 それにしては、今日は何事もなく過ぎていっている。

 最初の願いであるサトシへの事故はまだ起こっていない。

 ただ、大事故にあって痛い目に会えばいいと言うのでは、あまりにも漠然としすぎていて駄目なのだろうか?

 やはりもっと具体的に言ったほうがいいのかな。

 ぼんやりとそんなことを考えながら、古い校舎の裏沿いを部室棟へ歩き出した。
< 13 / 26 >

この作品をシェア

pagetop