魂、いただきます
 裏門から下校する生徒、やはり部室棟へ向かう生徒で、周りは賑やかだった。

 ふと、そんな日常の雑音に気付いて、宮乃はなぜ今更部室棟にいく必要があるのかと思い、歩みを止めた。

 次々と彼女を追い越して、皆先へ進んでいく。

 そう、自分はもう先へ進む必要はないのだ。

 今立ち止まったように、自分の人生の歩みを止め、自殺したのだから。

 まあ、ちょっち予定が狂って、悪魔と取り引きしたけど、それも今日一杯の期限付きだ。

 すでに死ぬことが確定した自分にとって、今生きていると言うことはもうどうでもいいことなのだ、いや、そうなのだろうか。

 でも、そのかわり願いが叶えられる。

 そう、このまま部室へ行っていつものように時間を過ごし、そのまま日常が終わってしまうなんてのは無意味じゃないか。

 それじゃあ、余録みたいな今日の一日も、願い事も無駄になる、ような気がする。

 宮乃はくるりと部室棟へ背を向け、さっき通り過ぎた裏門へ歩き出した。

 そう、これからの時間を残りの願いを使って有意義に過ごしてやるんだから。
< 14 / 26 >

この作品をシェア

pagetop