魂、いただきます
「宮乃っ」

 背後から呼び止められて、立ち止まる。

 振り向かなかった。

 振り向けなかったのかもしれない。

 聞き慣れた声、何度も聞いた声。

 サトシの声だ。

 好きだった声、嫌いになった声、そして、復讐を願った男の声。

 走って来た気配は周り込まずに宮乃の背後で止まった。

「宮乃、話があるんだ。聞いてくれ」

 あくまで自分を振り向かせる気だ。

 振り向くものか、自分から振り向くことは相手に対して譲歩すると言うことだ。

 絶対に許さないと決めたのだから、振り向く必要はない。

 向こうが前に周り込めばいいのだ。
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