魂、いただきます
 いつの間にか、サトシの枕元に黒い影法師が立っていた。

 見覚えのある姿、悪魔だ。

「なんであんたがここにいるのよ」

 彼女は悪魔に言った。

「そう言われましても、これも仕事でして」

「仕事?あ、あたしにはまだ二つ願いが残ってるし、時間もまだあるわよ」

「判ってますよ。あなたにではありません。この人にです」

「どういうこと?宮乃よくわかんなぁい」

「気付いているくせにそういうふうに言うんですから、まったく。契約を履行しにきたのです、彼とのね」

「つまり?」

「つまり、彼とも契約しているのですよ、あなたの次ぎに……。それで彼の場合、願いは一つでしたのでこうして魂をいただきに参りました訳です。はい」

「そ、そんな。それじゃあ、コイツ、あたしと同じ様に自殺したわけ?一番しそうにない奴だと思ってたけど」

「はい、意外と皆さんなさるようで……」

「ねぇ、どんな願いだったの」

「それは守秘義務があって言えません」

「いいじゃない。お願いだから教えてよ」
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