魂、いただきます
悪魔と契約
 気が付くと、宮乃は自分の部屋にいた。

 左手首を無意識に確かめる。

 何ともない。

 ナイフは、机の上に鞘に納まって置かれている。

 今まで机に突っ伏して眠っていたようだ。

「なーんだ、夢か。それにしてはリアルな夢だったな」

 まだ肉を切った感触が残る左手首を右手で揉みながら、宮乃は呟いた。

「いーえ、それは違います。手首を切ったのは現実ですよ」

「!」

 背後からいきなり声を掛けられ、宮乃は声にならない悲鳴を挙げて椅子ごと振り向いた。

 そこに、悪魔がいた。

 部屋の中央に、グリーンのカーペットから少し宙に浮いて、宮乃の方を見ていた。

 黒のスーツに黒タイ、ご丁寧にシャツまで黒い。

 頭には黒いソフト帽、顔には黒眼鏡と徹底している。

 それがなぜ悪魔かと言うと……
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