魂、いただきます
「ああ、すいません、驚きました?わたくし、悪魔です。どーも、よろしく」

 と、どこか間の抜けた声で名乗ったからだ。

「悪魔?あなたが?」

「そーです。あ、その目は信用していませんね」

 普通はそうに決まっている。

 しかし、悪魔はあくまで悪魔の笑みを口元に浮かべ、続けた。

「ならば、あなたが死のうとした理由なんかどうです?それとも、夕べお風呂場で滑って転んでお尻に痣ができたことなんか……」

「あわわわわっ。なんでそんなこと知ってんのよ」

「わたくしは悪魔ですからね。あなたのことはちゃんと何もかも調べてきたんですよ」

「何のために?」

「そりゃあ、もちろん、あなたと取り引きするためです」

「取り引き?」

「そうです。それが悪魔の仕事ですからね。人間と取り引きして、魂を手にいれる。あなたも聞いたことはあるでしょう?パターンですから」

「そりゃあ、あるけど。別にあたしは悪魔を呼び出した憶えはないわよ」

「ええ、当然です。わたくしからあなたのところへ来たのですから」

「どうして?」
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