月魄の罪歌
◇◆◇◆◇
「な~ぁ……まだか~??」
悪魔の笑みから一時間ほどたち、もうすでに時刻は5時頃。
あとちょっとで日が沈む。
「早く帰らないと、野宿になっちまうよ…」
佑哉は野宿している自分を想像してぞっとした。
虫が苦手な佑哉にとって、野宿ほど嫌なモノはない。
「そうだよ。さすがにもう帰ろう瑠璃」
壱哉も佑哉の意見に賛成した。
日向子も隣で頷いている。
「ん~…そうね~…。確かに野宿は嫌だわ。…………明日、また来ましょうか。」
瑠璃は悩んだ末、『また明日くる』という事で納得したらしい。
それほど、野宿は嫌だったんだろう。
「じゃあ、早く帰ろっ!!ダッシュで!!」
日向子はパァと顔をほころばせた。
「おっ。だったら、競争しようぜ」
佑哉は今にも駆け出しそうな日向子の背中に言った。
その顔には野宿にならなくてよかった、と心底ほっとした表情が含まれていた。
「いいね!やろう!」
日向子は満面の笑みを浮かべながら振り向く。
そして、佑哉の隣に行くと、また前を向き直して歩き始めた。
「よし。じゃあ…なんか賭けるか!!その方が燃えるしな!!」
「そうだね。う~ん、何にしようか…」
一所懸命賭けるものを考える日向子の横で佑哉はにやにやが隠せない。
頭の中では、今日の夕食のデザートを駆けて、日向子からぶんどろう、と策略する。佑哉の頭にははなから日向子に負けるなどという事はない。
「そうだな~…」
佑哉の企みをしらない日向子は、賭けるものをどうしようかと真剣に悩んでいる。
佑哉はにやりと笑う。
ここで俺が提案すれば、めでたくデザートは俺の物だ。