月魄の罪歌
「取りあえず、壁みたいな物を壊す努力をしましょう」
瑠璃は腰に手を当てながらそう言うと、何か武器持ってる人いない?と三人に向かって尋ねた。
「あたし仕込み棒持ってるよ!!」
日向子はハイッと右手を上げて発言した。
「物騒だなお前…。いつもそんなん持ってンのか」
佑哉のツッコミに日向子は頬を膨らませる。
「物騒って何よ!!コレは護身用よ、護身用!!」
それを聞き、佑哉は『護身も何も、お前を狙うやつなんているか』とぼそっと呟く。しかし、地獄耳の日向子には聞こえていたらしく、思いっきり脛を蹴られた。
「ッッ~!!!何しやがんだ、このチビヒナ!!!」
「アンタが悪いんでしょ!!バカ哉!!」
ギャーギャーと騒ぎ始める二人。
先程までのしんみりした雰囲気など微塵も伺えない。
それを見ていた壱哉は、やれやれとため息をつくと、瑠璃の側からそっと離れた。
俺知ら~ね。
「だから、何回言ったらわかんのよ!!あたしのこの髪は地ー毛なーのっ!!」
「はん!!そんな変な色しといてよく言うぜ!!絶対染めんの失敗したんだろ!!」
「はぁ!?染めたことなんて一回も無いし!!」
議題はいつの間にか別の物に変わり、ヒートアップしていくケンカ。
今にも取っ組み合いになりそうだった。
しかし。
二人が言い争う中、足音を立てずにやって来る第三者の仲裁によってそれは塞がれた。
「うるさい!!!!静かにしろ!!!!」
ボカッと、アニメなら効果音が付き添うな拳骨を二人にお見舞いする瑠璃。
日向子と佑哉は、その余りの痛さに絶叫した。
「痛いよ瑠璃姉ぇ!!」
「何すんだよ!!」
二人は涙目になりながら痛みを与えた人物に抗議する。
瑠璃はそんな二人をギロリと睨んだ。
「下らないケンカしてんじゃないわよ。今すべき事を考えなさい!!」
大声+怒声にビクッとしながらも、二人は同時に謝った。
それを聞いて、まったくっ!!と腕を組みながら眉間に皺を寄せる瑠璃を見て、壱哉はなんだかな~と呟いた。
「お~い。みんな~。木の棒とかその辺に落ちてないか?」