月魄の罪歌


壱哉は瑠璃がお小言を再開する前に呼び掛ける。
三人は一度体を壱哉の方へ向けると、目線をそれぞれ下に向けた。

「ん~。こっちには無い」
「俺んとこもねー」
「私のとこもないわ」

同じような返事が間髪入れずに聞こえた。壱哉は聖徳太子じゃねーんだよ、とため息を着く。
一人一人答えるのはめんどくさいので、全員に向けて分かったと言った。


「壱哉~。木の枝を使うなら、あそこの巨大なやつの折ればいいんじゃない?」

日向子は壱哉に向けて提案する。
佑哉は即座にいいな、それと同意した。
瑠璃は森林破壊だわ…とあまり良くない顔をしたが、かといって他に方法が見つからなかったのか黙って頷いていた。

「そうだな、そうしょう。じゃぁ俺取ってくるよ」

そう言って、ダッと走り去ろうとする壱哉のYシャツに手が伸びた。

「ちょ、待ってよ。また壱哉だけ行くとか危ないって。みんなで行こ?」


日向子が今にも千切れんばかりにYシャツを握るので、壱哉は慌てて分かったと承諾する。


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