月魄の罪歌
クロガネは、紅蘭の絶対に知らない情報を伝えた。
これは、花の魔人ではないと出来ない「囁き事」をして得た情報だ。
いくら「奇跡の子」と言えど、魔力の性質が違う魔法は使えないはず。
わざわざ花の名前を出したのは、紅蘭に自分の凄さを主張したかったからだった。
また、この情報はかなり有力なもの。
マリーゴールドの花は開くたび、酷く妖艶な雰囲気を醸し出す。
それは、女の持つ魔力のせいなのか、はたまた彼女の美貌のせいなのか。
「クロガネ。私に何か用があるのではな
いのか?」
微かに口角を上げてニヤリと笑う。
クロガネは驚いた。
彼女は感じ取っていたのか。
つい先刻起こった、とてもとても小さい、空間の歪みを……
いったいどれ程の魔力を秘めているのだろうか。
それとも、今日が十六夜の月だからなのか。
どちらにせよ、自分より遥かに魔力を持つ目の前の人物に恐怖を覚える。
が、それと同時に対抗心も沸くのだから、私は困ったものだ。
、間違いなく、未来に起こる、確定した予言を囁く花とされる。
紅蘭の耳に入れておきたかった。