月魄の罪歌

「…そういえばね~。黒木から聞いたんだけど、今私たちが向かってる『紅月島』にはね、紅い月が登ること以外にも、何か不思議なことが起きたことがあるみたいなの」

そこで一旦切り、デッキに付いていた手を離し、腕を組みむと、続ける。

「なんだか興味深いわよねぇ~……」

その姿はさながら研究者だ。
ヒナはちょっと笑いを含めながら相づちを打とうとした。

「お~い、ヒナ~!!」

直後船内から、日向子を呼ぶ声がした。
日向子は、この相手を小馬鹿にしたような、鼻持ちならないに声にピンとくる。
夏目佑哉だ。

「なに~…??」

日向子は心底かったるそうな声で答えた。目は半開きだ。
日向子と佑哉は、只今絶賛ケンカ中だ。
瑠璃と同じで、小さい頃から一緒にいる馴染みなのだが、ちょくちょく下らない事で反りが合わなくて反発する。
今回のケンカの原因は「朝食のウインナーを佑哉が日向子の分も一つ多く食べてしまったこと」。
実にくだらないことだが、本人たちは至って真剣。
どつき合いになることもしばしばだ。
ま、しかし、ケンカの理由が浅いだけにすぐ仲直りするので、瑠璃たちはあまり気にしていないのだが。

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