月魄の罪歌
「なんかも「もうすぐ着くみたいよ」
………明らかに佑哉の声を遮って聞こえてきたのは、佑哉とは少し質が違う、しなやかな声だった。
「ちょっと、壱哉。佑哉がまだ喋ってたでしょ~邪魔しちゃダメよ」
組んでいた腕を腰に当て、瑠璃はため息をつきながら注意する。
正義感と母性が強い彼女。
この辺りが、彼女が「瑠璃姉ぇ」と呼ばれる由縁だ。
『壱哉』と呼ばれていた声は、すぐさま「すいませ~ん!!」とふざけて謝った。
反省してないのは見え見え。
瑠璃は直接言わなきゃだめか、ともう一度ため息をつくと、船内へと入っていった。