魔女な彼女の恋語
「その優しさを自分自身に向けようとしないの?」
「え…?」
「あなたは毎日、自分自身を自ら傷つけてる。それは何故?」
不良とレッテルを張られた綾小路財閥の跡取り。
跡を継ぐのがイヤなのなら目を背けずに、ただひたすら逃げればいいのに。
松希はただ目を背けて周りに当たっている。
誰かを傷つけることで自分が何十倍も傷つくんだってことくらい、松希は気づいているはずなのに。
なぜ、自分の優しさを自分自身に向けようとしないの…?
「私は…ずっとこの街に一人ぼっちで…。けれど、それも覚悟で私は決めたの。自分のなすべきことをやると。例えそれがどんなに辛くても、私は私のできることを精一杯頑張ると。だからあなたも。あなたの未来はあなたのもの。あなたの未来はあなたで決めるもの。どうか、自分自身を傷つけることで自分の未来から逃げないで。あなたの本当にやりたいことは何?」
私の問いに答えることなく、松希は私の部屋を去っていった。