《短編》猫とチョコ
「…やっと来たんだね。」


嫌味を込めた口調で、あたしは隣の席に腰を下ろしたみぃにため息を混じらせた。



『…あれ?
寂しかった?』


キョトンとしたみぃは、首をかしげる。


みぃのこーゆーのは、天然なんだろうか。



「…んなわけないじゃん。
みぃ、出席日数とかテスト範囲の勉強とか、大丈夫なの?」


『いや、あんまり。』


“それよりさぁ”と付け加え、みぃは持っていたコンビニの袋の中身を取り出した。


そしてそれを、あたしに差し出す。



『新発売だって。』


期間限定らしい、イチゴジュースの新商品。


たまにみぃは、こーゆー優しさをあたしに見せる。


きっと、他の子にもこんなんだから、女が寄ってくるんだろうけど。


嬉しいような、嬉しくないような。



「…ありがと。
けど、ちゃんとあたしの話聞いてよ!」


『…ヒナ、機嫌悪い?』


ため息ばかりが出てしまうあたし。



「あたしのことじゃないでしょ?
みぃの話してんの!」


『…俺?』


「…今日だってそうじゃん。
そのうち、ホントにヤバくなるよ?」



結局あたしは、みぃの世話を焼いているわけだけど。


あたしがみぃに怒っていると、察したようにサクラと春本くんは近づいてこない。


今日は、あたしの不機嫌さ三割増。


みぃにぶつけようと思ってるわけじゃないけど、それでもやっぱり口調に出てしまう。



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