《短編》猫とチョコ
「…あのまま、また寝るのかと思ったけど。
一応、ちゃんと来たんだね。」


嫌味を込めた口調で、あたしは口を開いた。


こうでも言わない限り、みぃには伝わらない。



『…だって、そしたらヒナに殺されそうだし。
まぁ何とか起きれたってことで、また頼みます。』


「―――ッ!」



言いくるめられてる気がする。


いや多分、みぃは適当に言って逃げたいんだろうけど。



「もぉ、絶対嫌だからね!
今度からは、女の子とかに頼んでよ!」


『…じゃあ、ヒナで良いじゃん。』



いや、確かにあたしも“女の子”だけど。


あたしが言ってるのは、みぃに寄って来る女の子のことだ。



「あたしだって忙しいの!」



そうだよあたしだって、毎朝欠かさず彼氏におはようメールだって送らなきゃだし、

朝の身だしなみは女の子らしく、短くはしたくないんだ。


なのに何で、メリットすらないみぃを起こさなきゃいけないのか。



『ははっ!
超拒否られた(笑)』


眉間に深いしわを刻んでいるあたしをよそに、みぃは楽しそうに笑っていた。


飄々としていて、尻尾を握って捕まえても、すぐに逃げてしまう。


そんな猫みたいなみぃを手懐けるなんて、あたしには不可能だ。



『…じゃあ良いよ。
誰かに適当に頼むから。
それに、愛しの彼氏クンにも悪いからね。』


「―――ッ!」



最初からそう言ってくれてれば、こんなにあたしは怒らなくて済んだのに。


てゆーより、“彼氏クン”とか言って馬鹿にしてるのが、かなり癇に障るけど。


これ以上は何も言わず、あたしは無視をするように立ち上がった。



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