《短編》猫とチョコ
あの日以来、あたしがみぃにモーニングコールをすることはなくなった。


だけど朝起きて雨が降っていると、ふとみぃの顔が頭をよぎった。


だけど、振り払うように意識をメイクに向ける。



雨の日のみぃは、遅刻したりしなかったりだけど、休むことはほとんどなくなった。


誰かに起こしてもらっているのかなんて、あたしは知らないし、知りたくもない。


聞いたら余計に、みぃのチャラさに幻滅しそうだから。



最近では、彼氏にまで“怒りっぽくなった?”と聞かれるほどだ。


それもこれも、全部みぃの所為。


たまにしか会えなくなった彼氏との時間は、楽しく過ごして終わりたいのに。


それ以上に、彼氏以外の男のことを考えてムカついてる自分も、嫌になった。



席替えとかをすれば、あたしはみぃの世話係から脱却出来るの?


サクラには悪いけど、いい加減あたしも懲り懲りだ。


春本くんと仲良くなれたことだし、もぉ良いだろう。




『…最近、みぃくんと何かあった?』


本日空席の隣を指差し、サクラは聞いてきた。



「…別に何にもないけど?」


『…なら良いけどさぁ。
でもヒナ、最近みぃくんとあんま話さなくなったよね。』


「…あたし、そんなに話してたっけ?」


サクラの言葉に、ため息混じりであたしは返す。



『…まぁ、あんなんだけど見捨てないであげなよ。
みぃくんは、放っておいたら本当にダメな方向一直線だし。』


“って、春本くんも言ってたし♪”と付け加えた。


みぃのためなのか、春本くんのためなのか。


サクラの言葉が、何故かあたしを迷わせた。



あたしがそれでもみぃを嫌いきれないのは、良いところも割と知ってるから。


ちょっと話した好きなもののことを、何気に覚えててくれてたり、

宿題見せてあげたら、異常に喜んで嬉しそうにしてたり。


自分勝手に生きてるくせに、怒るに怒れない力を秘めた笑顔を持ってるから。


嫌いなところを挙げたらキリがないけど、柔らかく笑うところは嫌えない。



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