《短編》猫とチョコ
別れ
梅雨の終わりと同時に告げられたのは、期末テストの範囲だった。


折角の晴天の喜びを感じる暇もなく、最近ではダークな空気があたしを包む。


よく空席だった隣の席の住人も、再び真面目に学校に来るようになった。


いや、ほとんど来てるだけって感じなのは相変わらずだけど。



『…無理。
何とかしてくれよ、ヒナ…。』


「…知らないよ。
勉強わかんないのだって、学校来ない人が悪いもん。」


うな垂れるみぃに、あたしはツンとして言葉を返す。



『…いや、テストのことよりこの日差しだよ。
暑すぎて寝れねぇじゃん…。』



そっちかよ。


あれほど焦がれていた太陽も、いざ顔を出すといつの間にやら暑くてうざったい。


どうやらみぃは、春の陽気以外の季節はいらないらしい。



「勉強しろ!」


『…ヒナまでカッカすんなよ…』


ブーって顔をしてみぃは、広げているだけの教科書の上に顔を伏せた。


あたしだって頭が良い訳じゃないから、頑張らなきゃいけないんだ。


なのにみぃの所為で、全然集中出来ない。


日に日に焦ってくるクラスメイトをよそに、みぃは至っていつも通り。


まさか、勉強しなくても頭が良いのか?


それとも、はなっから諦めてる?


どっちにしても、あたしの邪魔だけはしないで欲しいのに。



『…暑いー…』


「冷凍庫で凍ってろ!」


『…いや、それはさすがに死ぬでしょ。』



みぃなんか、寝てるのか死んでるのかわかんない生活送ってるくせに。


だけどあたしは、言葉を飲み込んだ。



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