《短編》猫とチョコ
『―――ヒナ!
この日、何があるか知ってる?』


笑顔でサクラは、自分の手帳の赤い丸をつけた日を指差して聞いてきた。


考えを巡らせてはみたが、何の日だかわかんない。



『…知らないの?
この日、お祭りの日じゃん♪』


「…お祭り?」


そういえばとあたしは、記憶を辿った。


毎年夏休みに入ってからすぐの土曜に、地元の神社でお祭りがあるんだ。


規模は大きくないけど、地元では有名だ。



『そう!
でね?ヒナに頼みがあって~。』


「…頼みって、まさか…」


嫌な予感しかしなかった。



『お願い!!
みんなで一緒に行こうよ!!』



やっぱりだ。


“みんな”ってのは、あたしとサクラ、それに春本くんとみぃのことだろう。


いくら学校では仲が良くても、休日まで一緒に集まるほどの関係ではなかった。


何より、彼氏が居るのに友達とお祭り?


しかもあたしは、必然的にみぃとペアにならなきゃだし。



「…う~ん…」


曖昧な返事しか返せない。


確かにサクラを応援したい気持ちはあるけど。


ぶっちゃけ、お祭りは彼氏と行きたいし。



「…まだ先だし、考えとくね。」


そう言って、言葉を濁した。


ちょっと悲しそうな顔のサクラに、罪悪感が生まれるけど。



「でも、ホラ!
みんなの予定もさりげなく聞かなきゃだし?」


『…だよねぇ。』


ハァとサクラは、深いため息。


< 17 / 65 >

この作品をシェア

pagetop