《短編》猫とチョコ
『―――何の話してんの?』


驚いたあたし達は、思わず声の方に顔を向けた。


そこには、不思議そうにしている春本くんの顔があった。



『今、お祭りの話してたの♪』


瞬間、サクラの顔がパァッと明るくなったのを、あたしは見逃さなかった。



『…祭りって、毎年神社であるやつ?』


『そう、ソレ!!』


予想通り聞き返してきた春本くんに、サクラは興奮気味に言葉を返す。


ヤバい予感しかしなかった。


今しがたあたしは、話を先延ばしにしようとしたばかりだってのに。



『二人で行くの?』


『…二人ってゆーか…』


口ごもったサクラは、突然ひらめいたように顔を上げる。



『そうだ!
4人で行こうよ!!』



何が“そうだ!”だよ。


サクラの気持ちはわからなくもないが、ちょっと恋に盲目すぎる。


春本くんかみぃが、“用事がある”とか言ってくれれば良いんだけど。



『面白そうじゃん!
なぁ?みぃ!』


『…ん?
あぁ、良いんじゃない?』



良いのかよ?!


予想に反して誰一人、あたしの思う通りになってはくれない。


おまけにココで断れば、やっぱりあたしが悪者みたいだし。


“あたしはちょっと…”と言えるほどの勇気は、残念ながら持ち合わせては居ないから。


悲しい性格に育ってしまったと、自分の過去を恨んでみたり。



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