《短編》猫とチョコ
テストも何とか無事に終わり、すぐに夏休みに突入した。


これからは、少なくともストレスが減ることは確実だし。


何てったって、みぃと顔を合わせなくても良いんだから。


山場であるお祭りさえ乗り切れば、

あたしにも、そしてサクラにも薔薇色の日々が待っていることだろう。


考えるだけで、笑顔になってしまう。





終業式から一週間も経たないうちに、翌日は約束のお祭りの日となった。


やっと夏休みだって実感が出てきたのに。


だけどまぁ、前途は洋々なわけだし!


先にみんなと会って、みぃと一緒にはぐれた後、駅に戻って彼氏と待ち合わせ。


そんな計画も、バッチリだった。



♪~♪~♪

着信:コーちゃん


嬉しいことに、彼氏のことを考えていると本人から着信。


馬鹿みたいに浮かれてあたしは、通話ボタンを押した。



―ピッ

「もっしもし♪」


『…陽菜子。』


テンション高く出たあたしとはまるで正反対に、彼氏の声は低い。


“どしたの?”と不安に聞くと、少しの沈黙の後、彼氏はゆっくりと口を開いた。



『…別れよう。』


「―――ッ!」


何を言われてるのか、理解なんて出来なかった。


何かの冗談ではないのか。


だってこの前まで、明日を楽しみにしてたのに。


今朝送ったメールにだって、ちゃんと返信してくれたのに。


“冗談でしょ?”って言葉が出ない。


“本当だよ”って言われるのが怖いから。


血の気が引いて、上手く呼吸も出来なくて。



< 20 / 65 >

この作品をシェア

pagetop