《短編》猫とチョコ
「…みぃってさぁ。
女の子に平等に優しいみたいな顔してるけど、結局チャラいだけだよね。」


『…ハァ?』


あたしの言葉に、みぃは眉をしかめた。


みぃの怒った顔なんて初めて見たから、顔を上げることなんて出来ないけど。


それでも、そんな考えなのが許せない。


彼氏だって結局、そうだったから。



「…そーゆーの、あたし嫌いだから。」


横からは、みぃのため息が聞こえてきた。


熱気を含む風が、首の後ろを通る。


今まで、こんなにハッキリとは言ったことがなかった。



『…ヒナに関係なくない?
相変わらず機嫌悪いみたいだし、あとは彼氏クンにでも慰めてもらえよ。』


「―――ッ!」


冷たく放ったみぃの言葉が、あたしに突き刺さる。


呆れたのだろうみぃは、あたしを残すようにして立ち上がった。


みぃに八つ当たりしたって、何にもならないのに。


唇を噛み締めて拳を握り締めたのに、涙が溢れてきそうで。


顔を上げなきゃいけないはずなのに、

上げたらみぃなんかの前で泣いてしまいそうだったから。


どうすることも出来なかった。



「…コーちゃんもみぃも、どっちも最低じゃん…」


『…ヒナ?』


滲み始めた視界に映っているのは、みぃの足元。


頭の上からあたしの名前を呼ぶ声に、だけど顔なんか上げられるはずもない。



『…泣いてる…?』


「―――ッ!」


否定しようと思って顔を上げた瞬間、みぃとの視線がぶつかって。


また逸らすように、足元に視線を落とした。


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