《短編》猫とチョコ
『…彼氏クンと何かあった?』


やれやれと言った言い方で、みぃは再びあたしの隣に腰を下ろした。


本当にみぃは、こーゆーのにすぐに気付く。


だけど今は、嬉しくなんてない。



「…みぃに関係ない…」


『そーだけど、泣かれたら俺の所為みたいじゃん。』



怒ったら逃げて、落ち込んでたら寄って来て。


本当にみぃは、猫みたいだって。


そんな風に思うと、泣いてる自分が馬鹿馬鹿しく思えてきた。



「…振られたんだ、あたし。
好きな人出来たんだって。」


“昨日言われてさぁ”と笑うあたしに、だけどみぃは笑ってはくれなかった。



『…勿体無いねぇ。』


「えっ?」


『ヒナが良いヤツなの知ってるから、絶対すぐに次の男見つかるって!』


「―――ッ!」



あたしは、こんなにもみぃのことを邪険に扱っているのに。


なのに何で、こんな言葉を掛けてくれるんだろう。


言って、少しだけ楽になった自分が居る。


だけど、急に現実味を帯びてきて。


もぉ戻ることはないんだと、思わされた瞬間でもあった。




「…世の中の男みんな、みぃとかコーちゃんみたいなら、あたしはもぉ恋愛なんかしたく―――!」


“ない”と言い終わる前に、みぃによって抱きしめられた。


まるで子供をあやすように、あたしの背中をポンポンとする。


驚きすぎて言葉が出なかったけど、きっとみぃがいつも女の子にしてることだろうって。


みぃの心臓の音に、自然と安心してる自分が居て。


チャラくてムカつくけど、相変わらずあたしはみぃのことを嫌えない。


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