《短編》猫とチョコ
それからは、あたしは新しいクラスを楽しんだ。


新しい友達も出来て、それなりにクラスに馴染んで。


もちろん、チャラ男だと思っていたみぃと話すことなんてなかったから。


それでもやっぱり同じクラスなだけに、嫌でも視界には入ってくる。


時折違うクラスの女の子に呼ばれ、みぃがヤル気なく教室を出て行く姿を見て。


あたしの中で、みぃの評価が上がるなんてありえなかったのだ。



大学生になった彼氏とも順調だった5月の終わり。


“仲良しクラス”を目指している担任が提案したことがキッカケだった。


当たり前にある席替えで、あたしはみぃの隣の席になってしまったのだ。


引き攣る口元を無理やり上げ、あたしは笑顔を作った。



「…よろしくぅ…」



初めてちゃんと間近で見たみぃは、眠そうだった。


と言うより、彼は大体いつも眠そうだった。


垂れ目の所為なのか、それを人より三割増くらいに感じてしまう。



『…寝れる席。』



確かに、日当たりの良い、しかも一番後ろの席だったけど。


返す言葉は、これじゃないだろう。


そんな突っ込みを心の中で入れた所為で、あたしの笑顔は多分、崩れてしまっていただろう。



つまんない授業中、ふと見るといつもそこにはみぃの寝顔。


授業中のみぃは、大抵寝ている。


呑気な寝顔と春の陽気も手伝って、こっちまで睡魔と闘わなくてはいけない日々。


寝てるか、女の子と居るか。


そんなヤツ、男として以前に人としてダメだろう。


何度こんな風に思ってため息をつき、反対にある窓の外に目線を移したことだろう。


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