《短編》猫とチョコ
いつの間にか春本くんが来て、その後に暑さにやられた顔してるみぃも来て。


お祭りの日以来本当に久々に、4人で顔を合わせた。



『…ヒナ、聞いた?
この二人、俺らが迷子になってる間にイチャついてたんだぞ?』


“迷子”を強調したみぃは、あたしに向けてニシシッと笑う。


自分が作戦立てたくせに。



「…だよねぇ。
このお店、余計に暑いんですけどぉ。」


だけどあたしも、一緒になって二人をいじめる。



『…さっきも言ったろ?!
何回も電話したのに、出なかったのそっちじゃん!』


泣きそうな顔で春本くんは、あたし達を指差した。


だけどあたしもみぃも、笑いが止まらなくて。



『…いやぁ、気付かなかった。』


その棒読み口調に、笑ってばっかで。


二人の話を当たり前のように聞けるあたしが居て、

もちろん彼氏のことなんて思い出しもしなくて。


みぃが隣で笑ってるから、あたしもつられて笑って。


いつの間にかみぃのことを、嫌いだとは思わなくなっていた。


むしろ、良いヤツなんだと見直した。




それからは、たまに4人で会うようになって。


だけど、みぃを好きになることなんて相変わらずなかった。


たまに二人でも会っていたけど、

大抵は奢ってもらう代わりに、課題のノートを見せてあげたり。


いっつもこんな調子だし、やっぱり呆れてばっか。


デートみたいなことをしたこともないし、したいとも思わなかったのだ。


完璧あたしの中では、“お友達”レベル。


ってゆーりよ、夏休みになっても相変わらず世話係みたいだったし。


ポテトの取り合いしたり、二人で新商品のチョコに目を輝かせたり。


コレと言って何もなく、楽しく平凡な夏休みは終わりを告げた。


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