《短編》猫とチョコ
『…何だよ、みんなして。
悪いけど俺は、“チャラい”と言われることから卒業したのだ!』


何だかよくわからない宣言に、首をかしげるクラスメイト。


何故か自信満々に言うみぃの顔が、酷く滑稽に映って仕方がない。



「…馬鹿だしね。」


『そっか。』


あたしの一言で、その場が収まった。


悔しさを滲ませるみぃなんか、誰も相手にはしていなくて。



こうやって過ぎた楽しい文化祭。


頑張って、本当に良かったと思う。


クラスは前より一段と団結した気がするし。


結局みぃは何度か同じようなことがあったが、同じ台詞で適当に断っていた。


初めは半信半疑だったクラスメイトも、徐々にその宣言に信憑性を高めていった。


もちろん、あたしを含めてだけど。





あれほど大変だった準備も、終わればすぐに跡形もないほどで。


それが少し、寂しくもあった。


明日になればまた、いつも通りの生活が始まる。


本当に、目まぐるしくも夢のようだった日々。


あれほど嫌だと思っていた忙しさが、

いつの間にか楽しく感じていたのかもしれない。



片付けが終わったクラスから、順次下校。


何となく、最後の最後まで見届けたかった。


ダンボールは焼却場に運ばれ、機材は担任の元へと返された。


それをただ、あたしは見送り続けた。


こんな日々が、いつの間にか思い出に変わってしまうことが寂しかったから。


春が来れば、バラバラになってしまうクラス。


このクラスで、これと言って何もしていないあたしが、

唯一頑張った証だと思ったから。



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