《短編》猫とチョコ
『…だけどあの後、ヒナ一人で帰ってきたじゃない?
その後からだよね?二人が話さなくなったの。』


確認するように、サクラは聞いてきた。


“だから、何かあったの?”と。



「…みぃがチャラいから悪いんだよ。」



“チャラいから”


何度そう、みぃのことをそんな言葉に押し込めただろう。


自分の気持ちを否定するために、

みぃ一人を悪者にするために。



“ヒナ怒らせた俺が悪いから”


それだけみぃは、悲しそうに呟いていたと教えられた。


どこまでみぃは、女の子に優しいんだろう。


その他大勢に混じってあたしにも分け隔てない。


そーゆーところが嫌いで、そして好きなんだ。


だから、余計に苦しくなる。


そんなことを聞かされたからって、今更あたしにはどうすることも出来なかった。


それほどまでにあたし達の間にある溝は、

簡単には埋められないほどになっていたのだ。



本当は、気付いていたのに。


あの後からみぃは、ちゃんと女の子の誘いを断っていたのに。


みぃなりに、真面目になろうとしてるのはわかってるのに。


その優しさが邪魔しているだけ、ってことも。


誰のためかなんて、わからなかった。


だけど、“もしかしたら”なんてこと、思いたくなかったから。


そんなことに、目を背け続けていた。


友達だから優しいんだよ、と。


今度そんな風に言われたらきっと、あたしは泣いてしまうだろうから。


玉砕覚悟なんて、あたしは出来ない。


そんな覚悟があるならとっくに、ちゃんとみぃと話してる。



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