《短編》猫とチョコ
テストを終えたら、そのまますぐに冬休みに入った。


もちろん、みぃとは話せないまま。


これで良いなんて、思ってないけど。


それでも少なくとも、学校に居れば何かをキッカケに出来ただろうに。


もぉ当分、顔を見ることさえ出来ないんだから。


新学期に入った頃にはきっと、本当に取り返しがつかなくなる。


だけどもし会えたとして、あたしは何て言えば良いの?



クリスマスイブなのにあたしは、こんなことばかり考えてる。


夫婦で食事に出掛けた両親と、デートに出掛けたお姉ちゃん。


独りぼっちだけど、クリスマスイブを楽しめるほどの元気はない。


サクラと春本くんは、あたしを初詣に誘ってくれた。


あの二人のことだからもしかしたら、みぃも誘ってるのかもしれない。


だから未だにあたしは、返事を保留していた。


会って気まずくて二人に迷惑が掛かるなら、あたしは居ない方が良いから。



♪~♪~♪

鳴り響く携帯の着信音。


誰かのテンション高い声なんて聞きたくなくて、無意識にため息を吐き出した。


だけどいつまで経っても鳴り止まず、仕方なく携帯を持ち上げた。



着信:みぃ

「―――ッ!」


見間違いなのかと思った。


みぃと電話をすることなんて、用事でもない限りホントにありえない。


だけど瞬間に、あたしは通話ボタンに親指を掛けた。


ただもぉ、何でも良いからチャンスが欲しかったんだ。



―ピッ

『…出てくれて良かった。』


本当に、いつ以来だろうみぃの声。


その瞬間、涙が込み上げてきた。



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