《短編》猫とチョコ
『―――ヒナ!
あけおめー!!』


人混みの中でも構わず、サクラはバッグを振り回してあたしに叫ぶ。


苦笑いを浮かべながら迎えた新年。


今年は良いことがありますように、って。


しっかり神様にお願いした。



『ヒナ、何祈ったの?』


「みぃが進級出来ますように。」


『それはありがたい。』


思いっきり言った嫌味に、だけどみぃは普通に受け取ってしまったらしい。



「奇跡が起こると良いけどね。」


『…そーゆーこと言う?』


年初めに、神様の前でみぃと痴話喧嘩。


こんなの、日常茶飯事だと思ってたけど。


それでも今は、この奇跡に感謝しなくちゃ。





『…いつの間にか仲直りしちゃってんじゃん。』


「…だから、別に喧嘩してたとかじゃないんだって!
色々あるのよ!」


声を潜ませサクラは、ニヤついた顔であたしをつっつく。



『…とか言っちゃってぇ!
ホントはもぉ、付き合ったりとかしてんじゃないのぉ?』


「―――ッ!」


真っ赤になりながらも、あたしは強く否定した。


だけどもぉ、これ以上は隠せない。



「…でもあたし、多分みぃのこと好きだ。」


瞬間、サクラは飛び上がった。



『マジで?!頑張ろうよ、ヒナ!
絶対上手く行くよー!!』


まるで自分のことのように喜んでくれるサクラに、

恥ずかしさと嬉しさがこみ上げてくる。


サクラが春本くんを好きにならなかったら、あたしはきっと、

未だにみぃのことが嫌いだっただろう。


だからとにかく、サクラには感謝でイッパイ。



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